大病や怪我により心身に障害を負い、障害を治すための手術や通院で医療費が家計を逼迫させることがあります。そうした人たちの医療負担を軽減する制度が自立支援医療です。この記事では自立支援医療の一つである育成医療についてご紹介します。
目次
・育成医療とは
・対象者
・対象となる障害と治療
・自己負担額と自己負担上限額
・申請の流れ
・必要な書類
・まとめ
育成医療とは
育成医療とは、体に障害を持つ児童または、そのまま放置すると将来障害を残す疾患がある児童が、障害を除去、軽減する効果が期待できる治療を受けた場合に医療費が軽減される制度です。
対象者
対象者は次のすべての要件を満たす方です。
・18歳未満の児童
・現在持っている疾患を放置すると障害を残すと認められる場合
対象となる障害と治療
対象となる障害と治療は次の通りです。
〇視覚障害:白内障、先天性緑内障など
〇聴覚障害:先天性耳奇形→形成術など
〇言語障害:口蓋裂等→形成術など
〇肢体不自由:先天性股関節脱臼、脊椎、くるみ病(骨軟化症)等に対する関節形成術、関節置換術、及び義
肢装着のための切断形成術など
〇内部障害
・心臓:先天性疾患→弁口、心室心房中隔に対する手術
後天性疾患→ペースメーカー埋め込み手術
・腎臓:腎臓機能障害→人工透析療法、腎臓移植術(抗免疫療法を含む)
・肝臓:肝臓機能障害→肝臓移植術(抗免疫療法を含む)
・小腸:小腸機能障害→中心静脈栄養法
・免疫:HIVによる免疫機能障害→抗HIV療法、免疫調節療法、その他HIV感染症に対する治療
〇その他の先天性内蔵障害:先天性食道閉鎖症、先天性腸閉鎖症、鎖肛、巨大結腸症、尿道下裂、停留精巣
(睾丸)等→尿道形成、人工肛門の造設などの外科手術
自己負担額と自己負担上限額
自己負担額と自己負担上限額は次の通りです。
〇自己負担額 1割負担(市町村民税23万5千円未満の世帯)
〇自己負担上限月額
・生活保護世帯 0円
・市町村民税非課税世帯 「重度かつ継続」に該当しない 「重度かつ継続」
(本人の収入80万円以下) 2500円 2500円
・市町村民税非課税世帯 「重度かつ継続」に該当しない 「重度かつ継続」
(本人の収入80万円超) 5000円(2027年3月末まで) 5000円
・市町村民税課税世帯 「重度かつ継続」に該当しない 「重度かつ継続」
(市町村民税3万3千円未満) 5000円(2027年3月末まで) 5000円
・市町村民税課税世帯 「重度かつ継続」に該当しない 「重度かつ継続」
(市町村民税3万3千~23万5千円未満) 1万円 1万円
・市町村民税課税世帯 「重度かつ継続」に該当しない 「重度かつ継続」
(市町村民税23万5千円以上) 対象外 2万円(2027年3月末まで)
「重度かつ継続」とは、長期の治療と高額の医療費負担がある状態のことです。具体的には次の通りです。
・腎臓機能障害、小腸機能障害、免疫機能障害、心臓機能障害(心臓移植後の抗免疫療法に限る)、肝臓機能障
害(肝臓移植後の抗免疫療法に限る)のある方
・医療保険の多数回該当(1年間に4回以上高額療養費に該当)の方
申請の流れ
申請の流れは次の通りです。
1.市区町村で相談、書類の入手します。
↓
2.意見書の作成依頼
指定自立支援医療機関に「自立支援医療意見書」を作成依頼します。
↓
3.申請
必要な書類を揃えて市区町村の窓口に提出します。
↓
4.「医療受給者証」と「自己負担上限額管理表」が交付されます。
↓
5.受診
指定自立支援医療機関で「医療受給者証」と「自己負担上限額管理票」を提示して受診します。
「医療受給者証」の有効期間は原則90日です。(長期の治療の場合、最長1年)
申請から「医療受給者証」、「自己負担上限額管理票」の交付まで約3か月かかります。
必要な書類
必要な書類は次の通りです。
・自立支援医療費支給認定申請書
・自立支援医療意見書
・特定疾病療養受療証の写し(持っている場合)
・身体障害者手帳
・健康保険証(同一の保険に係る全員分)
・個人番号にかかる調書
・世帯状況が確認できる書類(世帯全員分)
・世帯調書
まとめ
育成医療についてご紹介してきました。こうした制度の存在を知り、活用することで少しでも高額な医療費の負担を減らしていきましょう。